オーラルフレイルのサインとなる舌圧とは?測定方法やトレーニングを解説
2025/09/20

こんにちは、江東区大島・東大島の歯医者、あおぞら歯科です。
オーラルフレイルとは、食べ物をかむ、飲み込む、会話をするといった口腔機能の衰えを指す言葉です。
身体の衰えを指す「フレイル」や加齢による筋肉量の減少および筋力低下を指す「サルコペニア」とも関連しており、オーラルフレイルを予防・対策することがフレイルやサルコペニア予防にもつながると考えられています。
オーラルフレイルが進行すると、「口腔機能低下症」と呼ばれる状態になります。
これは、加齢を含めたさまざまな原因で口腔機能が低下している状態です。
口腔機能低下症の症状にはいくつかの種類がありますが、その中の一つに「舌圧の低下」があります。
舌圧は、口腔機能の衰えや食べる機能の障害に対処するためにとても重要です。
今回は、舌圧が低下する原因やそれによるリスク、トレーニング法などについて解説します。
舌圧とは

舌圧とは、舌が上あごに接する際にかかる圧力のことです。
舌圧がとくに重要になるのは、食事の場面です。食べ物を口に入れると、舌はそれを奥歯の上へ運び、かみ砕く動作を助けます。
かみ砕かれた食べ物は、舌の動きによって唾液とともに再び奥歯に運ばれ、これを何度も繰り返すことで、飲み込みやすい状態に整えられていきます。
そして最終的には、舌が食べ物をひとまとまりにして喉へ送り込み、嚥下動作へとつながります。
このように、食べ始めから飲み込むまでの一連の動作において、舌圧は大切な役割を担っています。
そのため舌の筋力が弱まると、かむ・飲み込むといった基本的な動作に支障をきたすようになり、誤嚥のリスクが高まります。
舌圧を維持し、口腔機能を保つことは、食事をリスクなく楽しむために欠かせません。
舌圧が低下するリスク

舌圧が弱まると、舌の運動機能が低下し、「食べ物をかんで飲み込む」という一連の動作に支障が出ます。
これにより、食道へ食べ物をしっかりと送り込むことが難しくなり、上あごや喉の奥に食べ物が残ることがあります。
残った食べ物が誤って気管に入り、むせたり誤嚥性肺炎の原因になったりすることもあるため、注意が必要です。
また、しっかり食事がとれなくなることで栄養不足となり、身体的フレイルへつながる可能性もあります。
そのほか、食べこぼしが増えたり滑舌が悪くなったりすることも、舌圧低下によるリスクです。
舌圧が低下しているサイン

食事中によくむせる、食べ物が喉に詰まるといった場合、舌圧が低下している可能性があります。
また、水やお茶、乾いたお菓子類など、むせやすい食べ物を避けるようになっていたり、飲み込み後に口の中に食べ物が残っていたりする場合も、舌圧低下の可能性があります。
舌圧の検査方法
咀嚼・嚥下機能の低下が考えられる場合には、歯科医院などで舌圧を計測してもらいましょう。
一般的に歯科医院では、デジタル舌圧計に接続されたバルーンを口の中に入れ、舌を持ち上げて押しつぶすという動作で舌圧を測定することができます。
ただし、舌圧測定はすべての歯科医院で行っているわけではありません。
舌圧の測定を希望する場合には、事前にどのような検査方法に対応しているかを確認してから受診するといいでしょう。
舌圧トレーニング法
舌圧を高めるためのトレーニングとして、舌の体操があります。
例えば、舌を頬の内側に強く押し当てる体操では、舌を押し当てた部分を指で外側から軽く押さえ、30秒ほどその状態を維持する動作を繰り返すことで舌の筋力を鍛えます。
日常的に取り入れることで舌の力を維持しやすくなるため、1日に10回ほど、左右均等に行ってみましょう。
そのほかの口腔機能検査項目
口腔衛生状態不良(口腔不潔)
口腔内の清潔さを評価するために使用されている指標が、「舌苔指数(Tongue Coating Index:TCI)」です。TCIでは舌の表面を9つの領域に分け、それぞれに付着している舌苔の程度を3段階で評価することで、口腔内の衛生状態を判断します。
この「舌苔」とは、舌の表面に付着した、白もしくは黄色っぽいこけのようなものです。細菌や食べかす、はがれた粘膜などが混ざって形成され、口臭の原因になります。
口腔乾燥
口の乾き具合を調べる方法の一つに、「口腔水分計」という機械を使う方法があります。
これは舌の中央部分に機械のセンサーを当てて湿り気を測る方法です。数値が27.0未満だと、口内が乾燥していると判断されます。
また、サクソンテストという、ガーゼを舌の下に置いて2分間かみ、その間に出た唾液の量を測る方法もあります。
咬合力低下
咬合力低下とは、かむ力が弱くなることを指します。
これを調べるための方法として、感圧フィルムと専用の分析ソフトを組み合わせた機械で歯全体のかむ力を測定する方法があります。
測定値が500ニュートン未満の場合、咬合力が低下していると判断されます。
また、残っている歯の本数が20本未満の場合も咬合力が低下しているとみなされます。
歯の本数やかみ合わせの状態、そして筋力の衰えが、咬合力に影響を与えます。
咀嚼機能低下
咀嚼機能の低下は、咀嚼能力検査で確認します。
検査では、グミゼリーをかんだ後に水でうがいをして吐き出してもらい、その水に溶け出したグルコースの濃度を測定します
。測定値が100mg/dL未満の場合、咀嚼機能が低下していると判断されます。
嚥下機能低下
嚥下機能の低下は、嚥下スクリーニング質問票を用いて評価されます。
この質問票は10項目で構成されており、合計点が3点以上の場合は、専門の医療機関での詳しい検査が必要となります。
また、患者さん自身の感じる生活の質(QOL)を含めて嚥下機能を把握することができる、EAT-10という評価方法も使われています。
まとめ
舌圧が低下すると、食べる際の一連の動作がスムーズに行えなくなり、身体の機能低下につながるリスクが高まります。
早めに気づき対策をとることで、舌の働きを維持しやすくなります。
日頃の食事や会話の中で舌の動きを意識し、必要に応じて舌圧トレーニングや医療機関での検査を受けるようにしましょう。
また、高齢のご家族がいる方は、日常の様子に注意を払い、食べこぼしや滑舌の変化がないか気をつけることも大切です。
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